どうも、公認会計士として監査法人に勤めていたgordito(ゴルディート)です。
- 監査法人に就職予定だけど、どこがいいの?
- 監査法人選びで検討すべきポイントは何だろう。
このような疑問や悩みを解決できる記事になっています。
なぜなら、実際に監査法人に勤務していた私自身の経験を踏まえて、どのような切り口で監査法人を比較検討すべきかを紹介するからです。
記事を読み終えると、監査法人を就職先に選ぶ際には、どのようなポイントを検討すべきわかるようになります。
『監査法人はどこがいい?』の前提条件 - 監査法人の分類
『監査法人はどこがいい?』という本題に入る前に、監査法人を次の3つに分類します。
というのも、監査法人を規模に応じて区別しておいた方が比較しやすいからです。
- 大手監査法人(4法人)
- 準大手監査法人(5法人)
- 中小監査法人(200法人以上)
公認会計士・監査審査会は、公認会計士試験の実施団体なので、会計士試験の受験生はお世話になっていますね。
監査法人入所後は、CPAAOB検査やモニタリングレポートなどでお世話になります。
大手監査法人
公認会計士・監査審査会のモニタリングレポート上の定義は次の通りです。
上場国内会社を概ね 100 社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査実施者が 1,000 人以上いる監査法人。
公認会計士・監査審査会
具体的には、多くの方が知っている次の4つの監査法人のことを指します。
- 有限責任監査法人トーマツ
- EY新日本有限責任監査法人
- 有限責任あずさ監査法人
- PwCあらた有限責任監査法人
『Big4』とか『四大監査法人』とか呼ばれている監査法人のことですね。
公認会計士試験合格者の過半数は、これらの大手監査法人に就職しています。
大手監査法人について簡単にまとめていますので、興味のある方は次の記事をご覧ください。
準大手監査法人
公認会計士・監査審査会のモニタリングレポート上の定義は次の通りです。
大手監査法人に準ずる規模の監査法人。
公認会計士・監査審査会
知名度は下がりますが、準大手監査法人とは次の5つの監査法人のことを指します。
- 太陽有限責任監査法人
- PwC京都監査法人
- 東陽監査法人
- 仰星監査法人
- 三優監査法人
準大手監査法人に分類されていた『優成監査法人』と2018年に合併して大きくなった『太陽有限責任監査法人』、『PwC』と提携している『PwC京都監査法人』は比較的、有名かもしれません。
ですが、大手監査法人に勤務している会計士ですら、ほとんどの準大手監査法人を知らない場合が多いです。
準大手監査法人も簡単にまとめていますので、興味のある方は次の記事をご覧ください。
中小監査法人
公認会計士・監査審査会のモニタリングレポート上の定義は次の通りです。
大手監査法人及び準大手監査法人以外の監査法人
公認会計士・監査審査会
業界に詳しい人でないと、知らないレベルになってきます。
- アーク有限責任監査法人
- ひびき監査法人
- 監査法人A&Aパートナーズ 等
採用数が少ないので、監査経験者であったり、知り合いがいる場合などでないと入所することは難しいでしょう。
中小監査法人は200以上ありますが、売上高が1,000百万円を超える3法人だけ簡単に紹介しているので、興味のある方は次の記事をご覧ください。
監査法人選びで検討すべきポイント
さて本題です。
監査法人はどこがいいのでしょうか。
監査法人選びで検討すべきポイントは次のような点です。
- 知名度
- 給料
- 組織体制
- 監査クライアント
- 成長スピード
- 選択肢の多さ
- 勤務地
- 雰囲気 等
人によって優先順位に違いはあると思いますが、各ポイントを比較衡量し、総合的に考えてどこの監査法人がいいか判断しくださいね。
知名度
『知名度』は監査法人を選ぶ際の1つのポイントです。
私の受験時代は、公認会計士試験の合格発表前に就職活動をするのが一般的だったため、多くの受験生が『知名度』を頼りに就職活動をしていました。
『知名度』で監査法人を選ぶのであれば、『大手監査法人』か『準大手監査法人』の一部に狙いを定めることになるでしょう。
『知名度』で選ぶメリットとデメリットは次のようなものです。
メリット | デメリット |
・自慢できる ・転職活動がしやすい | ・失敗しやすい ・選考が通りにくい |
『知名度』で選ぶメリット
大手監査法人に就職できれば、知名度が高いので他人に自慢がしやすいですね。
『監査法人の魅力』で紹介しましたが、大手監査法人はグローバルなファームと提携しているため、特に外国人からの評価が高まりやすいです。
会計士の英語能力はけっこう低めなので、稀だとは思いますが、将来的に海外で働きたいと考えている場合には、大手監査法人に勤めていた方が海外勤務はしやすいでしょう。
そうでなくても、転職活動において、準大手監査法人や中小監査法人の出身よりは大手監査法人の出身者の方が有利になることが多いと思います。
なお、監査法人間の転職は比較的多いですが(1回、税理士法人や一般事業会社等を経由する場合含む)、大手から準大手や中小に移る場合がほとんどで、その逆は少ないです。
『知名度』で選ぶデメリット
就職後のことを何も考えずに近視眼的に『知名度』だけで選ぶと失敗する可能性が高まります。
興味のない業界のクライアントを担当することになったり、ミスマッチが起こりやすいです。
また、『知名度』の高い監査法人は就職したい人も多いので、需給が悪い場合には選考が通りにくいです。
私が就職活動をしていた際は会計士の就職氷河期だったので、ある程度の年齢に達している合格者は大手監査法人に就職しづらい状況にありました。
給料
『給料』も監査法人を選ぶ際の検討項目になります。
しかし、『監査法人の初任給』で紹介した通り、大手監査法人の初任給は横並びです。
2019年定期採用の募集要項は次の通りです(リンク先の表を再掲)。
トーマツ | EY新日本 | あずさ | PwCあらた | |
初任給 | 305,000円 (2018年実績) | 給与規程による | 305,000円 (首都圏手当含む) | 367,700円 (みなし残業含む) |
勤務時間 | 9:30~17:30 (7時間) | 9:30~17:30 (7時間) | 9:15-17:15 (7時間) | 9:15-17:15 (7時間) |
新日本の『給与規程による』、あらたの『みなし残業含む』等の説明は省きますが、大手監査法人の初任給は約30万円で横並びです。
また、採用を有利に進めたいので、準大手監査法人も『初任給』については、大手監査法人とほぼ同じ水準です。
そのため、監査法人に長く勤める予定がないのであれば、大手か準大手かはあまり気にしなくて良いでしょう。
シニアやマネージャーなどに昇進していくと、大手と準大手で給料水準に差が開いてくるので、長く監査法人に勤める予定なのであれば、大手監査法人を選んでおいた方が無難だと思います。
『残業時間』をどれだけ申請できるかは、どの監査法人に就職するかというよりは、どの事業部に配属されるか、どの監査チームに配属されるか(どのクライアントを担当するか)という要素が大きいですが、大手監査法人の大きいクライアントほど残業申請はしやすいと思います。
細かいですが、『出張手当』や『残業代の掛け率』等も大手の方が準大手より良いです。
このように、総合的に見たら『大手監査法人』が良いと言えます。
組織体制
監査法人選びで意外と見落としがちなのが『事業部の有無』です。
大手監査法人に就職し、金融部門に配属されれば、銀行、証券、保険等のクライアントばかり担当することになり、パブリック部門に配属されれば、独立行政法人、学校法人等のクライアントばかりを担当することになったりします。
一方、垣根の低い(ない)準大手監査法人に就職すれば、IPOを担当したり、学校法人を担当したり、メーカーを担当したりと、様々な経験がしやすいです。
このように、スペシャリスト志望か、ゼネラリスト志望かで選ぶべき監査法人は変わってきます。
ケースバイケースでなんとも言えませんが、知り合いの会計士を見ている限り、転職で給料が上がりやすいのはスペシャリストのような気がします。
監査クライアント
誰もが知るような日本の有名企業を監査したければ、大手監査法人を選択した方が良いでしょう。
というのも、基本的に超有名企業は大手監査法人に監査してもらっているからです。
IFRSを適用しているクライアントも大手監査法人が監査しているケースが多いので、IFRSに詳しくなりたいなら、大手監査法人を選ぶのが無難です。
成長スピード
早く成長したいなら大手監査法人より準大手監査法人や中小監査法人を選択した方が良いです。
というのも、大手監査法人で監査報酬が10億円を超えるようなクライアントを担当した場合、1年目は単純作業や雑務をやることが多くなってしまう可能性が高いからです。
一方、準大手監査法人で小規模クライアントを担当すれば、1年目からいろんなことをやらせてもらえます。
大きな監査チームのコマになるより、小さな監査チームの一員になった方が、監査業務の全体像や年間スケジュール等は早く吸収できるでしょう。
選択肢の多さ
大手監査法人では、準大手監査法人や中小監査法人より選択肢が多いです。
海外の大手ファームと提携している大手監査法人では、全世界に海外駐在として勤務できる可能性があります。
また、大手では、国内の事業会社や省庁などへの出向の機会も準大手や中小よりも圧倒的に多いです。
『監査法人を辞めたい』でも紹介しましたが、監査法人を辞めたい理由の1つが『監査がつまらない』というものです。
『監査がつまらない』と感じる多くの会計士は、最終的には転職してしまいます。
しかし、大手監査法人に勤務していれば、出向の機会も多くあるので、監査法人に在籍しながら、外部で数年間働くことが可能です。
すぐに『転職』と決めつけないで、監査法人にとどまりながら監査以外の業務をできる可能性を探るのも良いでしょう。
専門書の執筆活動の機会も準大手や中小より大手の方が多いです。
会計や監査の専門書は、執筆元が大手監査法人や大手監査法人で働く個人のケースが多くあります。
このように選択肢を多く持ちたいのであれば、大手監査法人に就職するのが望ましいでしょう。
勤務地
どこの監査法人がいいかは『勤務地』によって選ぶこともできます。
『東京』、『大阪』や『名古屋』での勤務を希望するのであれば、どの大手も準大手も事務所を構えていると思いますが、それ以外の地域となると選択肢は限られると思います。
まずは、ご自身の勤務したい地域に事務所を構えている監査法人を調べる必要がありますが、地方事務所でも待遇が良いのは、やはり大手監査法人になるでしょう。
大手監査法人は地域によってシェアに違いがあるので、その点もよく調べた方が良いと思います。
なお、大手監査法人の地方事務所は東京や大阪の事業部の傘下であることが多く、地方事務所で採用されても場合によっては東京や大阪に数年間勤務させられることもあります。
雰囲気
各監査法人の雰囲気を気にする人は多いですね。
大手監査法人のみですが、概ね次のよう言われています。
トーマツ | 体育会系 |
EY新日本 | 真面目 |
あずさ | 穏やか |
PwCあらた | クール |
ですが、大手監査法人は合併を繰り返して今の形になっているので、事業部が変わったり、監査チームが変わったりすると、『雰囲気』もガラッと変わることがあります。
そのため、世間で言われているイメージは、あくまでも参考程度にとどめておくのが良いでしょう。
まとめ
簡単にまとめておきます。
- 監査法人はどこがいいか判断する際に検討するべきポイントはたくさんある(知名度、給料、組織体制、監査クライアント、成長スピード、選択肢の多さ、勤務地、雰囲気等)。
- 監査法人を『大手』、『準大手』と『中小』に分類して考えると比較しやすい。
- 検討するべきポイントに自分なりに優先順位をつけ、総合評価でどこがいいか選ぶと良い。
いかがでしょうか。
監査法人を就職先に選ぶ際には、どのようなポイントを検討すべきわかったのではないでしょうか。
納得のいく就職活動、転職活動になることを願っています。
なお、今回は各監査監査法人の概要については触れませんでした。
大手監査法人の売上規模やクライアント数、会計士の人数等について知りたい方は次の記事がおすすめです。
準大手監査法人はこちらです。
監査法人の一覧を知りたい方には次の記事がおすすめです。
また、会計士試験合格後は、まずは監査法人に就職した方が良いと個人的に思いますが、その理由について知りたい方は次の記事をご覧ください。