どうも、監査法人に勤務していたgordito(ゴルディート)です。
- 監査法人のいろんなランキングを知りたい。
- 公認会計士集団である監査法人をもっと知りたい。
このような疑問や悩みを解決できる記事になっています。
なぜなら、様々な観点から監査法人をランキングしたものを紹介するからです。
具体的には、売上・利益ランキング、人員数ランキングやクライアント数ランキング、日経225シェアランキング等を紹介します。
記事を読み終えると、監査法人に対する理解が深まります。
監査法人の各種ランキング
当記事では、主に次のようなランキングを紹介します。
また、各監査法人の情報は、主に次の書類等を利用しています。
それでは早速、各種ランキングを紹介します。
売上・利益ランキング
まずは売上や利益に関するランキングを紹介します。
各監査法人の業務収入(売上高)や利益は次の通りです(単位:百万円)。
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | |
業務収入 A+B | 114,592 | 102,005 | 105,970 | 54,343 |
監査証明 A (割合) | 80,932 (70.6%) | 86,001 (84.3%) | 82,770 (78.1%) | 26,104 (48.0%) |
非監査証明 B (割合) | 33,660 (29.4%) | 16,004 (15.7%) | 23,199 (21.9%) | 28,238 (52.0%) |
営業利益 | 1,134 | 419 | 2,452 | 2,838 |
経常利益 | 2,518 | 904 | 2,374 | 3,365 |
税引前当期純利益 | 3,291 | 904 | 2,374 | 3,369 |
当期純利益 | 2,602 | 258 | 985 | 2,461 |
業務収入ランキング
業務収入(売上高)ランキングは次の通りです(単位:百万円)。
業務収入 | 前期 | 前期比(%) | |
トーマツ | 114,592 | 108,718 | +5,874(+5.4%) |
新日本 | 102,005 | 99,296 | +2,709(+2.7%) |
あずさ | 105,970 | 100,493 | +5,477(+5.5%) |
あらた | 54,343 | 48,735 | +5,608(+11.5%) |
業務収入ランキングの1位はトーマツです(前期と順位に変動なし)。
とはいえ、新日本、あずさもほぼ同じ水準であり、3法人の業務収入は大体1,000億円程度だと記憶しておいてよいでしょう。
あらたの業務収入は他の3法人の半分程度です。
なお、全ての監査法人で業務収入は前期比で増加しています。
特にあらたは、前期比+11.5%にもなっています。
大手監査法人の業績は好調であることがわかります。
監査証明業務ランキング
業務収入のうち、『監査証明業務』に関する部分は次の通りです(単位:百万円)。
監査証明業務 (監査証明割合) | 前期 | 前期比(%) | |
トーマツ | 80,932 (70.6%) | 77,601 (71.4%) | +3,331 (▲0.8ポイント) |
新日本 | 86,001 (84.3%) | 84,575 (85.2%) | +1,426 (▲0.9ポイント) |
あずさ | 82,770 (78.1%) | 78,285 (77.9%) | +4,485 (+0.2ポイント) |
あらた | 26,104 (48.0%) | 24,533 (50.3%) | +1,571 (▲2.3ポイント) |
監査証明業務ランキング(金額と割合)の1位は新日本です。
すべての監査法人で監査証明業務による収入が前期比で増加しているものの、あずさを除く3法人では監査証明割合が前期比で若干低下しています。
非監査証明業務ランキング
業務収入のうち、『非監査証明業務』に関する部分は次の通りです(単位:百万円)。
非監査証明業務 (非監査証明割合) | 前期 | 前期比(%) | |
トーマツ | 33,660 (29.4%) | 31,116 (28.6%) | +2,544 (+0.8ポイント) |
新日本 | 16,004 (15.7%) | 14,721 (14.8%) | +1,283 (+0.9ポイント) |
あずさ | 23,199 (21.9%) | 22,208 (22.1%) | +991 (▲0.2ポイント) |
あらた | 28,238 (52.0%) | 24,202 (49.7%) | +4,036 (+2.3ポイント) |
非監査証明ランキング(金額)の1位はトーマツで、非監査証明ランキング(割合)の1位はあらたです。
すべての法人で非監査証明業務による収入が前期比で増加しています。
また、先ほど紹介した通り、あずさ以外の3法人は非監査証明割合が前期比で上昇(監査証明割合は低下)しています。
業務収入は3法人(トーマツ、新日本、あずさ)で大差ないですが、内訳を確認すると違いがわかると思います。
新日本は監査証明業務の割合が大きく(業務収入の約85%が監査証明業務に依存)、トーマツは非監査証明業務の割合が相対的に高く(業務収入の約30%が非監査証明業務によるもの)、あずさは両者の中間に位置しています。
あらたは非監査証明業務の割合が非常に高く、この点に特徴があると言えます。
営業利益ランキング
営業利益は次の通りです(単位:百万円)。
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | |
業務収入 A | 114,592 | 102,005 | 105,970 | 54,343 |
営業利益 B | 1,134 | 419 | 2,452 | 2,838 |
営業利益率 B/A | 0.99% | 0.41% | 2.31% | 5.22% |
営業利益ランキングの1位はあらたで、営業利益率ランキングの1位もあらたです。
あらたが最も効率良く稼いでいることがわかります。
人員数ランキング
次に人員数に関するランキングを紹介します。
各監査法人の人員数(社員数や使用人数)は次の通りです(単位:人)。
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | |
社員 A | 560 | 537 | 592 | 157 |
公認会計士 | 509 | 527 | 558 | 132 |
特定社員 | 51 | 10 | 34 | 25 |
使用人 B | 6,193 | 5,017 | 5,676 | 2,903 |
公認会計士 | 2,565 | 2,445 | 2,588 | 888 |
公認会計士試験合格者等 | 1,291 | 1,160 | 1,238 | 630 |
監査補助職員 | 2,163 | 752 | 1,086 | 1,153 |
その他の事務職員等 | 174 | 660 | 764 | 232 |
人員 A+B | 6,753 | 5,554 | 6,268 | 3,060 |
社員の数ランキング
社員の数と内訳は次の通りです(単位:人)。
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | |
社員 A | 560 | 537 | 592 | 157 |
公認会計士 | 509 | 527 | 558 | 132 |
特定社員 B | 51 | 10 | 34 | 25 |
特定社員の割合 B/A | 9.1% | 1.9% | 5.7% | 15.9% |
社員の数ランキングの1位はあずさです。
とはいえ、業務収入と同様、トーマツも新日本もほぼ同じ水準であり、3法人の社員数は大差ありません。
あらたの社員数は他の法人の3分の1程度です。
特定社員の割合ランキングの1位はあらたです。
あらたは非監査報酬の割合が非常に大きいと紹介しましたが、特定社員(公認会計士ではない社員)の割合も他の3法人と比較して大きくなっています。
あらたは大手監査法人の中で、ちょっと毛色が違うことがわかると思います。
使用人の数ランキング
使用人の数と内訳は次の通りです(単位:人)。
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | |
使用人 A | 6,193 | 5,017 | 5,676 | 2,903 |
公認会計士 | 2,565 | 2,445 | 2,588 | 888 |
公認会計士試験合格者等 | 1,291 | 1,160 | 1,238 | 630 |
監査補助職員 B | 2,163 | 752 | 1,086 | 1,153 |
その他の事務職員等 C | 174 | 660 | 764 | 232 |
監査補助職員等割合 (B+C)/A | 37.7% | 28.1% | 32.6% | 47.7% |
使用人の数ランキングの1位はトーマツです。
監査補助職員等割合の1位はあらたです。
監査補助職員(B)やその他の事務職員等(C)は、公認会計士や公認会計士試験合格者等と比較して人件費が抑えられると考えられるため、あらたは上手く使用人を活用していると言えるでしょう。
クライアント数ランキング
次はクライアント数に関するランキングを紹介します。
クライアント数は監査証明業務と非監査証明業務に分けて紹介します。
監査証明業務のクライアント数は次の通りです(単位:社)。
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | |
クライアント数 (監査証明業務) | 3,296 | 3,709 | 3,635 | 1,182 |
金商法・会社法監査 | 914 | 940 | 785 | 141 |
金商法監査 | 10 | 56 | 34 | 52 |
会社法監査 | 1,112 | 1,292 | 1,386 | 443 |
学校法人監査 | 68 | 87 | 46 | 3 |
労働組合監査 | 31 | 8 | 16 | - |
その他の法定監査 | 508 | 619 | 568 | 177 |
その他の任意監査 | 653 | 707 | 800 | 366 |
また、非監査証明業務のクライアント数は次の通りです(単位:社)。
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | |
クライアント数 (非監査証明業務) | 3,084 | 2,248 | 2,133 | 1,263 |
大会社等 | 572 | 551 | 623 | 311 |
クライアント数(監査証明業務)ランキング
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | |
業務収入 (百万円) | 80,932 | 86,001 | 82,770 | 26,104 |
クライアント数 (社) | 3,296 | 3,709 | 3,635 | 1,182 |
クライアント当たり業務収入 (百万円/社) | 24.6 | 23.2 | 22.8 | 22.1 |
クライアント数(監査証明業務)ランキングの1位は新日本です。
監査証明業務の業務収入が最も大きい新日本が最も多くの監査クライアント抱える結果となっています。
クライアント当たりの業務収入(監査証明業務)の1位はトーマツであり、監査証明業務の収益性が高いと言えるでしょう。
大手監査法人は一層、収益性の高いクライアントを求めていくと考えられるので、監査リスクが高かったり、監査工数に比して監査報酬が低いクライアントとの監査契約は回避するようになるでしょう。
結果として、徐々にですが、クライアント当たりの業務収入は大きくなっていくと勝手に予想しています。
大手監査法人と契約を締結できなかった企業は、準大手監査法人や中小監査法人に流れていくことでしょう。
クライアント数(非監査証明業務)ランキング
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | |
業務収入 (百万円) | 33,660 | 16,004 | 23,199 | 28,238 |
クライアント数 (社) | 3,084 | 2,248 | 2,133 | 1,263 |
クライアント当たり業務収入 (百万円/社) | 10.9 | 7.11 | 10.9 | 22.4 |
クライアント数(非監査証明業務)ランキングの1位はトーマツです。
クライアント当たりの業務収入(非監査証明業務)の1位はあらたです。
非監査証明業務のクライアント当たりの業務収入は監査証明業務のそれとは異なり、各法人で金額が大きく異なります。
あらたのクライアント当たりの業務収入は、新日本のそれと比較して約3倍にもなっています。
日経225シェアランキング
日経平均株価の算定根拠となる225社のシェアランキングを紹介します。
業種 | トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | その他 |
水産 (2社) | 0社 | 1社 | 1社 | 0社 | 0社 |
鉱業 (1社) | 0社 | 1社 | 0社 | 0社 | 0社 |
建設 (9社) | 2社 | 4社 | 2社 | 0社 | 1社 |
食品 (11社) | 4社 | 5社 | 2社 | 0社 | 0社 |
繊維 (4社) | 1社 | 1社 | 2社 | 0社 | 0社 |
パルプ・紙 (2社) | 0社 | 1社 | 0社 | 1社 | 0社 |
化学 (17社) | 2社 | 5社 | 6社 | 2社 | 2社 |
医薬品 (9社) | 2社 | 2社 | 5社 | 0社 | 0社 |
石油 (2社) | 1社 | 1社 | 0社 | 0社 | 0社 |
ゴム (2社) | 1社 | 1社 | 0社 | 0社 | 0社 |
窯業 (8社) | 2社 | 3社 | 3社 | 0社 | 0社 |
鉄鋼 (4社) | 0社 | 1社 | 3社 | 0社 | 0社 |
非鉄金属製品 (11社) | 3社 | 2社 | 4社 | 1社 | 1社 |
機械 (15社) | 3社 | 6社 | 4社 | 0社 | 2社 |
電気機器 (28社) | 6社 | 9社 | 9社 | 3社 | 1社 |
造船 (2社) | 0社 | 0社 | 2社 | 0社 | 0社 |
自動車 (10社) | 0社 | 4社 | 3社 | 2社 | 1社 |
精密機器 (5社) | 1社 | 1社 | 2社 | 0社 | 1社 |
その他製造 (4社) | 0社 | 1社 | 2社 | 0社 | 1社 |
商社 (7社) | 3社 | 1社 | 2社 | 1社 | 0社 |
小売業 (7社) | 2社 | 2社 | 2社 | 1社 | 0社 |
銀行 (11社) | 6社 | 3社 | 2社 | 0社 | 0社 |
証券 (3社) | 0社 | 1社 | 1社 | 1社 | 0社 |
保険 (5社) | 0社 | 2社 | 2社 | 1社 | 0社 |
その他金融 (2社) | 2社 | 0社 | 0社 | 0社 | 0社 |
不動産 (5社) | 0社 | 3社 | 2社 | 0社 | 0社 |
鉄道・バス (8社) | 2社 | 3社 | 3社 | 0社 | 0社 |
陸運 (2社) | 1社 | 1社 | 0社 | 0社 | 0社 |
海運 (3社) | 1社 | 1社 | 1社 | 0社 | 0社 |
空運 (1社) | 1社 | 0社 | 0社 | 0社 | 0社 |
倉庫 (1社) | 0社 | 0社 | 1社 | 0社 | 0社 |
通信 (6社) | 3社 | 0社 | 2社 | 0社 | 1社 |
電力 (3社) | 1社 | 1社 | 1社 | 0社 | 0社 |
ガス (2社) | 0社 | 0社 | 2社 | 0社 | 0社 |
サービス (13社) | 3社 | 3社 | 4社 | 3社 | 0社 |
合計 (225社) | 53社 | 70社 | 75社 | 16社 | 11社 |
日経225シェアランキングの1位はあずさで、監査シェアは33.3%(75社)となっています。
2位は新日本で31.1%(70社)、3位はトーマツの53社(23.6%)となっており、これら3法人で88%のシェアを占めています。
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | その他 | |
クライアント数 (シェア) | 53社 (23.6%) | 70社 (31.1%) | 75社 (33.3%) | 16社 (7.1%) | 11社 (4.9%) |
あくまで225社だけにフォーカスした場合ですが、業種別のシェアを確認すると、トーマツは商社や銀行に強みを持っていると言えそうです。
一方、EY新日本は建設、機械、自動車、不動産等に強みがありそうです。
また、あずさは化学、医薬品、鉄鋼、ガス等のシェアが大きくなっています。
『その他』の監査法人のクライアント
先ほど紹介した表から、225社のうち11社が大手監査法人ではなく、『その他』の監査法人に監査をしてもらっていることがわかります。
『その他』の監査法人のクライアントとなっている11社と監査法人名は次の通りです。
業種 | 会社名 | 監査法人名 |
建設 | コムシスHD | 仰星 |
化学 | トクヤマ | 太陽 |
化学 | 日産化学 | 八重洲 |
非鉄金属製品 | 東洋製罐グループHD | 双研日栄 |
機械 | オークマ | 東陽 |
機械 | ジェイテクト | 京都 |
電気機器 | 京セラ | 京都 |
自動車 | スズキ | 清明 |
精密機器 | シチズン時計 | 日本橋事務所 |
その他製造 | 大日本印刷 | アーク |
通信 | KDDI | 京都 |
この中でも、ジェイテクト、京セラ、KDDIの3社は特に業務収入の大きいクライアントとなります。
そのため、京都は準大手監査法人に分類されていますが、大口のクライアントを抱えているという点で大手監査法人に似ている一面があります。
クライアント別の業務収入ランキング
先ほど、クライアント当たり業務収入を紹介しましたが、大手企業はどのぐらい監査法人に報酬を支払っているのでしょうか。
支払っている監査報酬が最も大きいのは三菱UFJフィナンシャル・グループ(トーマツが監査)で、トーマツに対する監査報酬(連結子会社含む)は5,749百万円にもなっています。
また、非監査証明業務に対する報酬やトーマツと同一のネットワークに属する組織に対する報酬も含めると、Deloitteに対して合計9,499百万円(2020年3月期)もの報酬を支払っているようです。
三菱UFJフィナンシャル・グループはニューヨーク証券取引所に上場しているため、20-Fなどを提出する必要があり、その点で費用がかさむ傾向にあります。
みずほフィナンシャルグループ(新日本が監査)、三井住友フィナンシャルグループ(あずさが監査)も同様、ニューヨーク証券取引所に上場しており、監査法人等に支払う報酬は大きくなっています。
TOPIX100シェアランキング
日経225のシェアランキングだけで十分な気もしますが、調査したのでTOPIX100のシェアランキングも簡単に紹介しておきます。
トーマツ | 新日本 | あずさ | あらた | その他 | |
クライアント数 | 29社 | 21社 | 37社 | 6社 | 7社 |
TOPIX100シェアランキングの1位もあずさで、監査シェアは37%(37社)となっています。
日経225シェアランキングでは3位だったトーマツが2位となっています。
まとめ
最後に簡単にまとめます。
いかがでしょうか。
監査法人に対する理解が深まったのではないでしょうか。
今回、ほとんど触れていませんが、実は大手監査法人以外の監査法人もたくさんあります。
上場会社を監査している監査法人の一覧(110法人)に興味がある方は次の記事をご覧ください。
準大手監査法人や中小監査法人に興味のある方は次の記事がおすすめです。