【監査法人のランキング2020】売上、人員、クライアントを比較!

監査法人ランキング - アイキャッチ(70-1)公認会計士

どうも、監査法人に勤務していたgordito(ゴルディート)です。

  • 監査法人のいろんなランキングを知りたい。
  • 公認会計士集団である監査法人をもっと知りたい。

このような疑問や悩みを解決できる記事になっています。

なぜなら、様々な観点から監査法人をランキングしたものを紹介するからです。

具体的には、売上・利益ランキング、人員数ランキングやクライアント数ランキング、日経225シェアランキング等を紹介します。

記事を読み終えると、監査法人に対する理解が深まります。

監査法人の各種ランキング

監査法人の各種ランキング(70-2)

当記事では、主に次のようなランキングを紹介します。

  • 売上・利益ランキング
  • 人員数ランキング
  • クライアント数ランキング
  • 日経225シェアランキング

また、各監査法人の情報は、主に次の書類等を利用しています。

大手4法人のみのランキングになります。

それでは早速、各種ランキングを紹介します。

売上・利益ランキング

まずは売上や利益に関するランキングを紹介します。

各監査法人の業務収入(売上高)や利益は次の通りです(単位:百万円)。

トーマツ新日本あずさあらた
業務収入 A+B114,592102,005105,97054,343
 監査証明 A
 (割合)
80,932
(70.6%)
86,001
(84.3%)
82,770
(78.1%)
26,104
(48.0%)
 非監査証明 B
 (割合)
33,660
(29.4%)
16,004
(15.7%)
23,199
(21.9%)
28,238
(52.0%)
営業利益1,1344192,4522,838
経常利益2,5189042,3743,365
税引前当期純利益3,2919042,3743,369
当期純利益2,6022589852,461

トーマツのみ2019年6月〜2020年5月、その他の3法人は2019年7月〜2020年6月の実績。

業務収入ランキング

業務収入(売上高)ランキングは次の通りです(単位:百万円)。

業務収入前期前期比(%)
トーマツ114,592108,718+5,874(+5.4%)
新日本102,00599,296+2,709(+2.7%)
あずさ105,970100,493+5,477(+5.5%)
あらた54,34348,735+5,608(+11.5%)

業務収入=売上高だと考えてください。

業務収入ランキング1位トーマツです(前期と順位に変動なし)。

とはいえ、新日本、あずさもほぼ同じ水準であり、3法人の業務収入は大体1,000億円程度だと記憶しておいてよいでしょう。

あらたの業務収入は他の3法人の半分程度です。

一般には、これらの4法人を四大監査法人(大手監査法人とも言う)と呼びますが、業務収入の小さいあらたを除外し三大監査法人という言い方をする人もいます。

なお、全ての監査法人で業務収入は前期比で増加しています。

特にあらたは、前期比+11.5%にもなっています。

大手監査法人の業績は好調であることがわかります。

監査証明業務ランキング

業務収入のうち、『監査証明業務』に関する部分は次の通りです(単位:百万円)。

監査証明業務
(監査証明割合)
前期前期比(%)
トーマツ80,932
(70.6%)
77,601
(71.4%)
+3,331
(▲0.8ポイント)
新日本86,001
84.3%
84,575
(85.2%)
+1,426
(▲0.9ポイント)
あずさ82,770
(78.1%)
78,285
(77.9%)
+4,485
(+0.2ポイント)
あらた26,104
(48.0%)
24,533
(50.3%)
+1,571
(▲2.3ポイント)

監査証明業務ランキング(金額と割合)1位新日本です。

前期と順位に変動なし。

すべての監査法人で監査証明業務による収入が前期比で増加しているものの、あずさを除く3法人では監査証明割合が前期比で若干低下しています。

非監査証明業務ランキング

業務収入のうち、『非監査証明業務』に関する部分は次の通りです(単位:百万円)。

非監査証明業務
(非監査証明割合)
前期前期比(%)
トーマツ33,660
(29.4%)
31,116
(28.6%)
+2,544
(+0.8ポイント)
新日本16,004
(15.7%)
14,721
(14.8%)
+1,283
(+0.9ポイント)
あずさ23,199
(21.9%)
22,208
(22.1%)
+991
(▲0.2ポイント)
あらた28,238
52.0%
24,202
(49.7%)
+4,036
(+2.3ポイント)

非監査証明ランキング(金額)1位トーマツで、非監査証明ランキング(割合)1位あらたです。

前期と順位に変動なし。

すべての法人で非監査証明業務による収入が前期比で増加しています。

また、先ほど紹介した通り、あずさ以外の3法人は非監査証明割合が前期比で上昇(監査証明割合は低下)しています。

業務収入は3法人(トーマツ、新日本、あずさ)で大差ないですが、内訳を確認すると違いがわかると思います。

新日本は監査証明業務の割合が大きく(業務収入の約85%が監査証明業務に依存)、トーマツは非監査証明業務の割合が相対的に高く(業務収入の約30%が非監査証明業務によるもの)、あずさは両者の中間に位置しています。

あらたは非監査証明業務の割合が非常に高く、この点に特徴があると言えます。

業務収入(売上高)が10億円を超える監査法人は12法人ありますが、あらたは唯一、監査証明業務より非監査証明業務の割合の方が大きい監査法人になります。

監査法人の中では異色の存在と言っても良いかもしれません。

営業利益ランキング

営業利益は次の通りです(単位:百万円)。

トーマツ新日本あずさあらた
業務収入 A114,592102,005105,97054,343
営業利益 B1,1344192,4522,838
営業利益率 B/A0.99%0.41%2.31%5.22%

営業利益ランキングの1位あらたで、営業利益率ランキングの1位あらたです。

あらたが最も効率良く稼いでいることがわかります。

人員数ランキング

次に人員数に関するランキングを紹介します。

各監査法人の人員数(社員数や使用人数)は次の通りです(単位:人)。

トーマツ新日本あずさあらた
社員 A560537592157
 公認会計士509527558132
 特定社員51103425
使用人 B6,1935,0175,6762,903
 公認会計士2,5652,4452,588888
 公認会計士試験合格者等1,2911,1601,238630
 監査補助職員2,1637521,0861,153
 その他の事務職員等174660764232
人員 A+B6,7535,5546,2683,060

社員の数ランキング

社員の数と内訳は次の通りです(単位:人)。

トーマツ新日本あずさあらた
社員 A560537592157
 公認会計士509527558132
 特定社員 B51103425
特定社員の割合 B/A9.1%1.9%5.7%15.9%

ここで言う社員は、監査法人の経営層(監査法人に対して出資する)だと考えてください。

一般に『パートナー』と呼ばれる人たちです。

社員の数ランキングの1位あずさです。

とはいえ、業務収入と同様、トーマツも新日本もほぼ同じ水準であり、3法人の社員数は大差ありません。

あらたの社員数は他の法人の3分の1程度です。

なお、あらたの社員1人当たりの業務収入は非常に高くなっています。

特定社員の割合ランキングの1位あらたです。

あらたは非監査報酬の割合が非常に大きいと紹介しましたが、特定社員(公認会計士ではない社員)の割合も他の3法人と比較して大きくなっています。

あらたは大手監査法人の中で、ちょっと毛色が違うことがわかると思います。

使用人の数ランキング

使用人の数と内訳は次の通りです(単位:人)。

トーマツ新日本あずさあらた
使用人 A6,1935,0175,6762,903
 公認会計士2,5652,4452,588888
 公認会計士試験合格者等1,2911,1601,238630
 監査補助職員 B2,1637521,0861,153
 その他の事務職員等 C174660764232
監査補助職員等割合 (B+C)/A37.7%28.1%32.6%47.7%

使用人の数ランキングの1位トーマツです。

監査補助職員等割合の1位あらたです。

監査補助職員(B)やその他の事務職員等(C)は、公認会計士や公認会計士試験合格者等と比較して人件費が抑えられると考えられるため、あらたは上手く使用人を活用していると言えるでしょう。

クライアント数ランキング

次はクライアント数に関するランキングを紹介します。

クライアント数は監査証明業務非監査証明業務に分けて紹介します。

監査証明業務のクライアント数は次の通りです(単位:社)。

トーマツ新日本あずさあらた
クライアント数
(監査証明業務)
3,2963,7093,6351,182
 金商法・会社法監査914940785141
 金商法監査10563452
 会社法監査1,1121,2921,386443
 学校法人監査6887463
 労働組合監査31816-
 その他の法定監査508619568177
 その他の任意監査653707800366

また、非監査証明業務のクライアント数は次の通りです(単位:社)。

トーマツ新日本あずさあらた
クライアント数
(非監査証明業務)
3,0842,2482,1331,263
 大会社等572551623311

クライアント数(監査証明業務)ランキング

トーマツ新日本あずさあらた
業務収入
(百万円)
80,93286,00182,77026,104
クライアント数
(社)
3,2963,7093,6351,182
クライアント当たり業務収入
(百万円/社)
24.623.222.822.1

クライアント数(監査証明業務)ランキング1位新日本です。

監査証明業務の業務収入が最も大きい新日本が最も多くの監査クライアント抱える結果となっています。

クライアント当たりの業務収入(監査証明業務)1位トーマツであり、監査証明業務の収益性が高いと言えるでしょう。

大手監査法人は一層、収益性の高いクライアントを求めていくと考えられるので、監査リスクが高かったり、監査工数に比して監査報酬が低いクライアントとの監査契約は回避するようになるでしょう。

結果として、徐々にですが、クライアント当たりの業務収入は大きくなっていくと勝手に予想しています。

新型コロナの影響で予想通りにはいかないかもしれません。

大手監査法人と契約を締結できなかった企業は、準大手監査法人や中小監査法人に流れていくことでしょう。

日経新聞の記事でも取り上げられましたが、IPO業務も大手監査法人から準大手監査法人・中小監査法人へ流れる傾向にあります。

クライアント数(非監査証明業務)ランキング

トーマツ新日本あずさあらた
業務収入
(百万円)
33,66016,00423,19928,238
クライアント数
(社)
3,0842,2482,1331,263
クライアント当たり業務収入
(百万円/社)
10.97.1110.922.4

クライアント数(非監査証明業務)ランキング1位トーマツです。

クライアント当たりの業務収入(非監査証明業務)1位あらたです。

非監査証明業務のクライアント当たりの業務収入は監査証明業務のそれとは異なり、各法人で金額が大きく異なります。

あらたのクライアント当たりの業務収入は、新日本のそれと比較して約3倍にもなっています。

日経225シェアランキング

日経平均株価の算定根拠となる225社のシェアランキングを紹介します。

業種トーマツ新日本あずさあらたその他
水産
(2社)
0社1社1社0社0社
鉱業
(1社)
0社1社0社0社0社
建設
(9社)
2社4社2社0社1社
食品
(11社)
4社5社2社0社0社
繊維
(4社)
1社1社2社0社0社
パルプ・紙
(2社)
0社1社0社1社0社
化学
(17社)
2社5社6社2社2社
医薬品
(9社)
2社2社5社0社0社
石油
(2社)
1社1社0社0社0社
ゴム
(2社)
1社1社0社0社0社
窯業
(8社)
2社3社3社0社0社
鉄鋼
(4社)
0社1社3社0社0社
非鉄金属製品
(11社)
3社2社4社1社1社
機械
(15社)
3社6社4社0社2社
電気機器
(28社)
6社9社9社3社1社
造船
(2社)
0社0社2社0社0社
自動車
(10社)
0社4社3社2社1社
精密機器
(5社)
1社1社2社0社1社
その他製造
(4社)
0社1社2社0社1社
商社
(7社)
3社1社2社1社0社
小売業
(7社)
2社2社2社1社0社
銀行
(11社)
6社3社2社0社0社
証券
(3社)
0社1社1社1社0社
保険
(5社)
0社2社2社1社0社
その他金融
(2社)
2社0社0社0社0社
不動産
(5社)
0社3社2社0社0社
鉄道・バス
(8社)
2社3社3社0社0社
陸運
(2社)
1社1社0社0社0社
海運
(3社)
1社1社1社0社0社
空運
(1社)
1社0社0社0社0社
倉庫
(1社)
0社0社1社0社0社
通信
(6社)
3社0社2社0社1社
電力
(3社)
1社1社1社0社0社
ガス
(2社)
0社0社2社0社0社
サービス
(13社)
3社3社4社3社0社
合計
(225社)
53社70社75社16社11社

最新の事業年度の有価証券報告書(主に2020年3月期)から情報を収集しています。

進行期(主に2021年3月期)で、大和ハウス工業(トーマツ→新日本)、味の素(新日本→あずさ)、キヤノン(新日本→トーマツ)等、監査法人の異動が発生しているので、シェアは若干変わっています。

日経225シェアランキングの1位あずさ、監査シェアは33.3%(75社)となっています。

2位は新日本で31.1%(70社)、3位はトーマツの53社(23.6%)となっており、これら3法人で88%のシェアを占めています。

トーマツ新日本あずさあらたその他
クライアント数
(シェア)
53社
(23.6%)
70社
(31.1%)
75社
33.3%
16社
(7.1%)
11社
(4.9%)

あくまで225社だけにフォーカスした場合ですが、業種別のシェアを確認すると、トーマツは商社や銀行に強みを持っていると言えそうです。

一方、EY新日本は建設、機械、自動車、不動産等に強みがありそうです。

また、あずさは化学、医薬品、鉄鋼、ガス等のシェアが大きくなっています。

『その他』の監査法人のクライアント

先ほど紹介した表から、225社のうち11社が大手監査法人ではなく、『その他』の監査法人に監査をしてもらっていることがわかります。

『その他』の監査法人のクライアントとなっている11社と監査法人名は次の通りです。

業種会社名監査法人名
建設コムシスHD仰星
化学トクヤマ太陽
化学日産化学八重洲
非鉄金属製品東洋製罐グループHD双研日栄
機械オークマ東陽
機械ジェイテクト京都
電気機器京セラ京都
自動車スズキ清明
精密機器シチズン時計日本橋事務所
その他製造大日本印刷アーク
通信KDDI京都

この中でも、ジェイテクト、京セラ、KDDIの3社は特に業務収入の大きいクライアントとなります。

そのため、京都は準大手監査法人に分類されていますが、大口のクライアントを抱えているという点で大手監査法人に似ている一面があります。

『京都』は『あらた』と同様、PwCのメンバーファームとなっています。

クライアント別の業務収入ランキング

先ほど、クライアント当たり業務収入を紹介しましたが、大手企業はどのぐらい監査法人に報酬を支払っているのでしょうか。

支払っている監査報酬が最も大きいのは三菱UFJフィナンシャル・グループ(トーマツが監査)で、トーマツに対する監査報酬(連結子会社含む)は5,749百万円にもなっています。

また、非監査証明業務に対する報酬やトーマツと同一のネットワークに属する組織に対する報酬も含めると、Deloitteに対して合計9,499百万円(2020年3月期)もの報酬を支払っているようです。

トーマツは、Deloitte Touche Tohmatsuのメンバーファームです。

三菱UFJフィナンシャル・グループはニューヨーク証券取引所に上場しているため、20-Fなどを提出する必要があり、その点で費用がかさむ傾向にあります。

みずほフィナンシャルグループ(新日本が監査)、三井住友フィナンシャルグループ(あずさが監査)も同様、ニューヨーク証券取引所に上場しており、監査法人等に支払う報酬は大きくなっています。

TOPIX100シェアランキング

日経225のシェアランキングだけで十分な気もしますが、調査したのでTOPIX100のシェアランキングも簡単に紹介しておきます。

トーマツ新日本あずさあらたその他
クライアント数29社21社37社6社7社

2020年11月30日時点の構成銘柄になります。

TOPIX100シェアランキングの1位あずさで、監査シェアは37%(37社)となっています。

日経225シェアランキングでは3位だったトーマツが2位となっています。

まとめ

監査法人ランキング - まとめ(70-3)

最後に簡単にまとめます。

まとめ
  • 売上(業務収入)ランキングの1位はトーマツ。監査証明業務に限定した場合、新日本がトップであり、非監査証明業務に限定するとトーマツがトップ。非監査証明割合が圧倒的に高く、また営業利益や営業利益率の首位となっているのはあらた。
  • 社員の数が多いのは新日本で、特定社員割合が大きいのはあらた。使用人の数が多いのはトーマツで、監査補助職員等割合が大きいのはあらた。
  • クライアント数(監査証明業務)のトップは新日本だが、クライアント当たり収入(監査証明業務)のトップはトーマツ。クライアント数(非監査証明業務)のトップはトーマツだが、クライアント当たり収入(非監査証明業務)のトップはあらた。
  • 日経225の監査シェアランキングの1位はあずさ(33.3%)。トーマツ(23.6%)、新日本(31.1%)、あずさの3法人で日経225シェアの88%を占める。

いかがでしょうか。

監査法人に対する理解が深まったのではないでしょうか。

今回、ほとんど触れていませんが、実は大手監査法人以外の監査法人もたくさんあります。

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