【監査法人のリストラ】新型コロナでリストラ再来となるのか?

監査法人のリストラ - アイキャッチ(88-1)公認会計士

どうも、監査法人に勤務していたgordito(ゴルディート)です。

  • 新型コロナ影響により監査法人で再度リストラが行われるのかな?

このような疑問を少しでも解決できる記事になっています。

なぜなら、監査法人のリストラ時に勤務していた私が新型コロナによるリストラの有無について紹介するからです。

記事を読み終えると、監査法人のリストラが再来するか否かについて多少、判断できるようになります。

リストラとは『再構築』を意味し、本来、人員整理以外も含んだ言葉ですが、多くの日本人はリストラというと人員整理を思い浮かべるので、当記事ではリストラ≒人員整理とします。

監査法人のリストラ - リーマンショック後

監査法人のリストラ - リーマンショック後(88-2)

リーマンショック後、大手監査法人はリストラを敢行したという事実があります。

私が勤務していた監査法人でも次のようなことがありました。

  • アサインされた監査チームのパートナーが早期退職した。
  • 同じ職位に長年とどまっている会計士もリストラ対象となった。

アサインされた監査チームのパートナーが早期退職した。

私が主にアサインされていた監査チームのパートナーが早期退職制度を活用し、期中に急遽、退職しました。

具体的な計算式は把握していませんが、早期退職により、数千万円ほど退職金が上乗せになったようです。

監査法人で最も人件費が高いのはパートナーなので、リストラの対象となったのでしょう。

私が勤務していた監査法人だけでなく、他の大手監査法人も同じような状況だったようです。

同じ職位に長年とどまっている会計士もリストラ対象となった。

リストラ対象はパートナーだけではありませんでした。

同じ職位に通常より長くとどまっている会計士を対象としてリストラが行われました。

退職金を上乗せすると共に監査法人が転職サポートもするという充実ぶりでした。

私の年次はリストラ対象外でしたが、『退職金上乗せされるなら転職したいよね』と言っていた同期がいました。

この時期は、頻繁に退職者の案内メールが来ていた記憶があります。

では、なぜ監査法人はリストラをせざるを得なかったのでしょうか。

様々な要因がありますが、次の2つが主たる要因でしょう。

  • 監査報酬の減少
  • 人件費の増加

つまり、売上が減少しているのに費用が増加していたので、人員整理が必要になったのです。

監査報酬の減少

内部統制監査や四半期レビューが2008年に導入され監査報酬は増加したものの、同じ2008年にリーマンショックが起き、企業業績が悪化します。

リーマンショック後、監査クライアントからの監査報酬の値下げ圧力が高まると共に、監査クライアントの奪い合いで監査報酬を下げてでも監査契約を締結するような事態がありました。

低廉報酬に該当するような事例も散見されました。

監査報酬(上場企業の平均)は2008-2009年頃から徐々に減少し始め、監査法人の経営状況を悪化させました。

蛇足ですが、2013年頃に底を打ち、徐々に回復しています。

人件費の増加

公認会計士試験は2006年に新試験制度に移行していますが、新試験制度により大量の合格者が生まれました。

公認会計士試験の合格率等の推移(20-2-2)

2006年から2008年の3年間で1万人を超える合格者がいます。

大手監査法人は多くの試験合格者を受け入れました。

金融庁等からの受け入れ圧力もあったことでしょう。

それにより、監査法人では人件費が増加していました。

脇道に逸れますが、2008年-2011年頃は、試験合格者の未就職問題が発生しています。

有識者が考えていたより、公認会計士試験合格者の受け皿がなかったのです。

公認会計士試験の合格率に関する記事の中で、その辺りについて紹介しているので、興味のある方はご覧になってください。

【公認会計士】試験の合格率や合格者の平均年齢等の推移
公認会計士試験の『合格率』、『合格者の平均年齢』や『女性比率』等の推移を紹介します。記事をご覧頂くと、公認会計士試験の合格率の推移の理由がわかり、公認会計士試験合格者の具体的なイメージを持つことができるようになります。

監査法人のリストラ - 新型コロナ

監査法人のリストラ - 新型コロナ影響(88-3)

新型コロナの影響で、監査法人が再度リストラを敢行すると考えている人も多いのではないでしょうか。

しかし、私は今のところ大規模なリストラはないだろうと予想しています。

それは次の通り、リーマンショック後と同じ状況ではないと考えているからです。

  • 監査法人の業績は大きく悪化してなさそう
  • 公認会計士試験合格者の数が1,300人程度で安定推移している

つまり、大幅な売上の減少、費用の増加というダブルパンチは発生していないと予想しています。

監査法人の業績は大きく悪化してなさそう

リーマンショックの時は、監査報酬の下げ圧力と人件費の増加で監査法人の経営が悪化していました。

大手監査法人で赤字となったところもありました。

しかし、新型コロナにより大きく売上が減少したという話しを聞いていません。

私の耳に入ってきていないだけかもしれませんが・・・。

監査法人のランキングに関する記事で紹介しましたが、昨年の大手監査法人の業績は軒並み好調でした。

大手監査法人である4法人全てで監査報酬のみならず、非監査報酬も前期比でプラスとなっています。

また、直近の監査法人の定期採用の状況を見ていると、それなりに試験合格者を採用しています。

短答式試験合格者の採用も継続しているようです。

積極的に採用しているので、監査法人の売上は大幅には減少していなそうですよね。

新型コロナの影響をもろに受けるのは今年の決算なので、2021年秋頃に発表される決算が楽しみです。

大手監査法人のうちトーマツは5月決算、EY新日本、あずさ、PwCあらたは6月決算です。

公認会計士試験合格者の数が1,300人程度で安定推移している

公認会計士試験合格者のグラフを再掲します。

公認会計士試験の合格率等の推移(20-2-2)

ここ数年、試験合格者の数は1,300人程度で安定推移しています。

そのため、2006-2008年の頃にように監査法人が過剰に試験合格者を採用しなくても良い状況であり、人件費が過大とはなっていなそうです。

また、リーマンショック以後、大手監査法人を中心に、相対的に人件費の低い監査補助職員の活用を増やし、人件費の増加が抑制されています。

多少、筋肉質な体制に変わっています。

最近の監査補助職員の割合等に興味のある方は、次の記事の『人員数ランキング』の内容をご覧ください。

【監査法人のランキング2020】売上、人員、クライアントを比較!
2020年の最新の情報をもとに監査法人のランキングを紹介します。具体的には、売上・利益ランキング、人員数ランキング、クライアント数ランキング、日経225監査シェア等を紹介します。公認会計士や監査法人に興味にある方にオススメの記事です。

まとめ

監査法人のリストラ - アイキャッチ(88-4)

最後にまとめます。

まとめ
  • リーマンショック後に監査法人がリストラを敢行した理由は、売上の減少と費用の増加というダブルパンチがあったから。
  • 新型コロナによる影響は多少あるだろうが、大幅な売上減少、過大な人件費という状況ではなく、大規模リストラの再来とはならなそう。

いかがでしょうか。

監査法人のリストラが再来するか否かについて多少、判断できるようになったのではないでしょうか。

巣篭もり需要等もあり、公認会計士試験の受験者が増加しているようなので、それに水を差すようなリストラが起きないことを願っています。